時事コラムを中心に、社会評論エッセイや名言・格言・諺の解説を掲載

こんにちは、ゲストさん - ユーザ登録 - ログイン

原野辰三の社会評論エッセイ

人間性利説

管理社会

資本主義経済社会はあくなき効率化を追求する。その結果、強烈な管理社会を生み出した。社会問題として“管理社会”という言葉が顔を出したのは約40年前頃からである。“管理”とは「企業の目的である利益を最大に達成するために人・もの・金を最も効率的に組織して、それらをコントロールすること」と定義する。

資本主義経済の発展は大量生産・大量消費が絶対条件である。先の管理という概念は大量生産主義から生まれた。そして科学的管理を初めて導入したのがテーラーで、いわゆるテーラー方式と呼ばれていることは広く知られている。

大量生産・大量消費の資本主義経済社会は徹底的にコストダウンと効率を追求し、目的である利潤を追求する。そのために「管理技術と手法」の研究開発が進歩した。生産・物流・販売・人事財務・コンピューターシステム・ロボット等ハードとソフト両面から飛躍的に発達させてきた。そして「管理手法」は「私」企業だけではなく,あらゆる組織に敷衍し、今日では公教育にまで及んでいる。

前6章「利的志向性と現代社会」で、人は「組織化された社会」の構成員であるとともにその社会システムの中に組み込まれている述べたが、それは人がその社会によって綿密に管理されていることを意味する。

人は組織に組み込まれ、かつ組織に管理されている。社会全体がコンピューターシステムになっていて、人間はその上でコントロールされているのだ。

とくに、法人資本主義社会においては、人間は帰属する企業ないしその他団体の直接的な管理下にある。今日の社会が「管理社会」と呼ばれる所以は、企業団体との関係において顕著に表れる。

管理体制とは「管理する者」と「管理される者」の関係であり、支配する者と支配される者の関係でもある。したがって管理関係においては国家による国民の支配より、むしろ企業団体による国民の支配のほうが、はるかに強力であると言えよう。法人資本主義社会と言われる、もう一つの顔である。

現代用語辞典は「管理社会」を次のように説明している。

「現代社会では組織が巨大化し、人々は組織の階層秩序に組み込まれる。組み込まれた人々は、組織の運営と計画の実権を握るエリートに管理、操作され、一個の歯車として等質化し、自主性を奪われて分散、孤立する。同時に組織への適応能力を要求されて絶えず競争と不安にさらされる。すなわち組織の巨大化による個人の圧殺という図式であろう」。

現代の管理社会は人間に多大な問題をもたらしていると多くの学者が指摘している。また管理社会を問題視した小説家も少なくない。

田畑暁生氏(東京大学院卒、神戸大学助教授)は≪管理社会論と情報社会論・・・転換点としての「1984年」の論文≫で管理社会の諸問題について多くの著者の指摘を簡潔に列挙しているのでご紹介すると概ね次のとおりである。(項目名と分類は筆者)

  • 管理社会とヒエラルキー

      ヒエラルキーの下位のものは従属感や無力感にさいなまれ、上位に登って行こうとするものも、日常的な競争で疲労し、また、人付き合いが外面的になり、協調はするが本物の親密感が得られず、人格の分裂を起こしやすく、出世のための利己心がはびこり、責任からはなるたけ逃避し、怨恨の精神が蔓延する。

      引用元 : 管理社会―組織のなかで人間はどう生きるか (1970年4月)

  • 管理社会と教育

      過剰な制度の網の目を人々にかぶせ、人間の自立的なあり方を失わせる。学校教育が「自ら学ぶ」力を、病院が「自ら癒す」力を、交通制度が「自ら動く力」を失わせる。

      引用元 : 脱学校の社会 (1977年10月20日)

  • 管理社会の若者

      オーガニゼーション体制(政府・半独占的企業・広告などのマスメディアの複合体)の内部ではラット・レースが繰り広げられ、外部にはそこから疎外された「貧民」と、そこから自由なごく少数の「自由人」がいる。オーガニゼーション体制は、それ以外の価値観を認めず、そこから疎外された若者たちは、自らのことを価値の低いものだと思い込むように仕向けられていく。子供・若者は出口のないこのような体制の中で否応なく育てられ、「不条理に育つ」ほかはない。

      引用元 : 不条理に育つ―管理社会の青年たち (1971年)

  • 管理社会と国家

      管理社会のイメージには悪いイメージがある。その一つが高度に発達した中枢管理機能によって個人が完全に管理されている、自由もプライバシーもない超近代的な全体主義国家のイメージ。

      引用元 : 香山健一「管理化」より

  • 管理社会と資本主義
      産業主義とは、商品の大量生産・大量消費のシステムであり、それを生み出す効率重視の巨大な堅い組織(特に企業と国家)である。そして個人は、堅い組織の中でうちひしがれ、大きな何物かに「操られている」という像が描かれている。
  • 文明と管理社会
  • 情報社会と管理社会

      巨大組織(特に企業)の内部において、いわゆるエリートが情報を独占し、それ以外の人を管理する。そのために私生活は貧困化し、無力感が横溢する。

      引用元 : 管理社会と自由 (1981年11月)

      情報メディアの進展によって国家(あるいは企業なども含めて"支配権力")が「やすやすと人間を管理してしまう脅威」。

      引用元 : ジョージ・オーウェル (1981年11月)

      管理社会は高度情報化社会を生み、高度情報化社会では直接的な管理社会化が進むだけではなく、間接的な管理社会化もすすむ。人間を自治能力のある人格として見る度合いが薄らでいく。また情報化の進展はその便利さと並行して、情報の大衆からの収奪がすすむ。あふれるような情報が氾濫しているにもかかわらず、その情報の選択権と操作権は少数の企業と国家によって独占される。さらに管理社会のほころびを弥縫(ビホウ)するための総合安全保障構想が統合された支配力を強めて、日本を軍事大国に導いていく

      引用元 : 対話なき管理社会―高度情報化社会への警鐘 (1984年3月)

  • 日本型管理社会

      上から外からの管理を、主体が無化する度合いに応じて自分自身の空虚な内面に「中流意識」として価値規範化する。

      引用元 : 管理社会の神話 (1984年2月)

      日本型の管理社会では「企業一家」「マイホーム」「宗教団体」「組合」「学校」「町内会」「職業団体」「利益集団」といった「国家のイデオロギーを分掌しうる中間組織に委譲されて」管理する権力との同一化が行われるという特徴がある。だから「国家対個人といった主体的発想は打ち消され、管理するものと管理されるものとのギャップは意識されなくなる。

      引用元 : 管理とデモクラシー (1984年12月)

  • 以上の説明を整理して、まとめてみると管理社会とは次のような社会である。

    管理社会では、まず支配者・管理者は人間(国民・市民・労働者)を次のように扱う。

    「過剰な制度の網の目を人々にかぶせ、事物と人間を全面的に管理する。なかでも企業は個人を完全に管理する。そして社会への全順応と組織への適応能力を要求する。

    そのうえ、一個の歯車として等質化し、社会に等号されない者は、いっさい許容しない。またそれ以外の価値観を認めず人間の自立的なあり方を失わせ、人間を自治能力のある人格として見なくなる」。

    その結果、人間(国民・市民・労働者)は次のようになる。

    1. 自主性を奪われ、個人は圧殺され、主体的発想は打ち消され、また自由もプライバシーもなくなる。
    2. ラット・レースが繰り広げられ、日常的な競争で疲労しまたそれに耐えきれずドロップアウトした者、つまりそこから疎外された者は私生活は貧困化し、無力感が横溢する。特にそこから疎外された子供や若者たちは、出口のないこのような体制の中で否応なく育てられ、「不条理に育つ」ほかはない。
    3. そして人間の精神状態や人間関係は
      • 絶え間ない競争によって不安にさらされる。
      • 人間は分散、孤立する。
      • 従属感や無力感にさいなまれ、また人付き合いが外面的になり、協調はするが本物の親密感が得られず、人格の分裂を起こしやすく、出世のための利己心がはびこり、責任からはなるたけ逃避し、怨恨の精神が蔓延する。
      • 「自ら学ぶ」力を、「自ら癒す」力を、「自ら動く力」など自助努力心を喪失してしまう。
      • 自らのことを価値の低いものだと思い込むように仕向けられ、個人は、堅い組織の中でうちひしがれ、大きな何物かに「操られている」ように思いこむ。
    4. とくに日本では国家と個人の間にある中間組織(とくに企業)が国家権力と同一化されることで、管理する者と管理される者のギャップが意識されなくなる。

加えて、管理社会は高度情報化社会を生み、ますます管理の効率化と強化をはかった。そして一部のエリートが情報を独占し、その情報の選択権と操作権は少数の企業と国

家によって独占される。そうして、やすやすと人間を管理してしまう。さらに管理社会のほころびを弥縫(ビホウ)するために、問題を外的なことに転嫁し、例えば仮想敵国に目を向けさせることによって、為政者は国民の支持を集め、支配力を強めて、軍事大国に導いていく危険性さえある。

PR
社会評論エッセイ メニュー
参加ランキング
にほんブログ村 小説ブログ コラムへ
にほんブログ村 シニア日記ブログ 70歳以上へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
にほんブログ村 シニア日記ブログへ
人気BlogRanking