時事コラムを中心に、社会評論エッセイや名言・格言・諺の解説を掲載

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原野辰三の社会評論エッセイ

人間性利説

組織と人間

前章で、国家「組織」の中でわれわれは生きていると述べた。では「組織」とは一体どういうものかを考えていこうと思う。

“組織”という言葉はあらゆる分野で使われている。医学の分野ならば細胞組織とか神経

組織などと使われている。人体には約60兆の細胞があると言われている。細胞は神経、

脳、骨格、各内臓、皮膚、血管等々すべての器官などを組成し、そしてそれらが有機的に結合し、全体として有効的に機能して生命が維持され生活をしている。

他方、企業や官公庁やその他諸団体もそれぞれが組織である。その組織は法律上の権利義務の主体として認められた場合は人格を与えられ自然人に対して法人となる。すなわち法人組織である。いま組織の具体的なものをいくつか上げたが、「組織」の概念についてもう少し説明を続けたい。

「組織」を広辞苑では次のように説明している。

広辞苑 第六版 (机上版) (大型本)

  1. 緯(よこ)糸と経(たて)糸とを組み合わせること。
  2. 組み立てること。
  3. ほぼ同形・同大で、働きも似かよった細胞の集団
  4. 社会を構成する各要素が結合した、有機的な働きを有する統一体。またその構成の仕方。

引用元 : 広辞苑 第六版 (机上版) (2008年1月11日)

では英語ではどうか。ライトハウス和英辞典では次のとおり説明している。

ライトハウス和英辞典

  1. (特定の目的をもった人の集団)organization
  2. (一つにまとめて構成すること) formation
  3. (系統だった一つの体系)system
  4. (生物で同じ細胞の集合部分)tissue

引用元 : ライトハウス和英辞典 (2002年11月8日)

辞書からも組織は只単なる集団乃至集合体ではないことが分かる。

私は組織を「目的をもって体系(システム)化された集合体)」と解している。その体系について前出の現代哲学事典によると次のように説明している。

現代哲学事典

「体系は集められたものが合成されると言う以上、集められたものが相互に連関していることが必要である。例えば、テレビの受信機や自動車のようなものは、個々の部品が相互に連関しあって一つの機能的な全体をなしている。これはシステムとよばれ『組織系』と訳される。組織系には原子・分子・細胞・多細胞体などそれぞれ部分があり、全体は構造的機能的に結びあって一つの統一体として組織系をなしている。また植物の群落や動物の群居は、それを構成する個々のものが相互に助け合い、全体としてその環境とのバランスを維持して生活している。いずれも組織系である。

人間社会もまた体系化(システム化)された集合体である。狭義的には宗教・芸術・道徳・言語・学問・政治・経済などの諸要素は有意味的連関をなし一つの体系をなしている。

広義の組織系として捉えると部族・村落・都市・国家、婚姻制度や教育制度のような社会制度、封建制社会、君主制、資本主義制社会、民主主義制社会など社会システムがあり、それを一般的に体制と呼んでいる」

筆者要約

引用元 : 現代哲学事典 (講談社現代新書 225) (1970年4月)

以上の説明では、システムを、一つは自然科学分野、もう一つは社会科学分野に大別して説明している。私はシステムを無機系と有機系に分ける。つまり電気回路やコンピューター、また自動車のようなマシーンやメカニズムを無機系システムとし、生物すなわち動植物や人間社会を有機系システムとする。

両者の相違は環境の影響を受けるか否かで区別する。有機系は自然環境の影響を大きく受ける。特に人間の場合は生物として自然環境の影響をうけるとともに社会環境の影響も大きい。さらに社会環境と自然環境は相互に連関しているので複合的な環境の影響をうける。

いずれにしても人間は社会システムの組織体制に組み込まれて存在しているのであるが、さらに現代のように高度に発達した文明社会では、そのシステムは重層的になっている。人間は国家体制、行政組織、企業組織等々の構成員であるとともに、そのシステムは重層的ヒエラルキーの中に組み込まれており、しかも各階層のそれぞれにもそれぞれの組織があることを付け加えておきたい。

組織は「一見、理想的」に見える。“理想的”と言ったのは、この社会システムには民主主義のルールがあるからである。仮に現状に問題や不満があれば、われわれ国民が「選挙」によって国のあり方をどうにでも改革できる。つまり法(ルール)は守るべきものだが、その法に問題があれば変えたらよい。また変えることができる。それが民主主義というものであろう。しかし実際はどうであろうか。

先に私は“一見”と敢えて言ったのは、実は今日の社会が余りにも問題があり過ぎ、とても「理想的」な結果になっていない、また一向に改善されない。そうすると民主主義に問題があるのではないか、という疑問が生じる。私は「民主主義は理想的だが妖怪でもある」と言っておきたい。このことについては後で述べようと思っている。

ここまで組織と人間を国家と人間の関係について述べたが、もう一つ大きな中間が存在している。人間の関係は国家だけではなく、われわれ国民は全員がどこかの何かの組織に属している。そして人間はどこかの組織に帰属ないし関係して生活の糧を得ている。

現代は資本主義経済体制の社会であるから、人間は利益を目的とした組織、つまり中間組織の利益共同体に帰属して生きているのである。すなわち、われわれは国家の一員であるとともに、中間にある利益共同体の一員でもある。ここで私が注目していることは、特にわれわれ日本人にとって国家との関係より、中間組織の利益共同体(企業など)との結びつきほうが、より緊密で、より強固であるという現実である。やはりここにも私が言う「利的志向性」の動向が見られる。

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