時事コラムを中心に、社会評論エッセイや名言・格言・諺の解説を掲載

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原野辰三の社会評論エッセイ

人間性利説

社会とは

人間は文字どおり、自分以外のすべてのもの(自分以外の人ならびに自然界に存在するすべてのもの)と無関係に存在し得ない。逆に言えば全体との関係において初めて個(人)が存在する。このように人間は関係の中での個人であり、その人の行為は必ず自分以外の人、すなわち他人に影響を及ぼす。影響を及ぼさないことは何一つない。逆に影響もうける。

個人対個人であっても、また家庭学校職場等集団内であっても、或いは集団外の私的な行動、例えば電車やバスに乗っても、車を運転しても、自転車に乗り、町を歩いても、公衆トイレを使用してもすべてがそうだ。また友人知人との交際もそうだ。ビジネスにおいてもすべてがそうだ。

最近は例えば電車に乗っても街を歩いても感ずることだが、モラルの欠如は目に余る。

モラル欠如は、「個人は全体との関係においてはじめて存在する」ということを認識できていないことに起因する。

ロビンソン・クルーソーでもない限り、人は関係の中での個である。文明が発達した社会ほど、個と全体の関係は複雑に錯綜する。また、個の影響力はその人の置かれた立場や業などその人の存在によって大小強弱がある。例えば親の行為、学校の先生の行為など子供に対する影響力は絶大である。とくに総理大臣に至ってはその行為は国民全体の命と暮らしの根底に関わる重大な責務を負っている。

先程から「全体の中での個」について述べているが、全体とは社会のことである。社会

といえば家庭も学校も隣近所も社会と言えなくもない。また今日の資本主義社会もその一つである。一応ここでは後記の広辞苑で説明されている意味を「社会」ということにしておきたい。その理由はこれから述べる中で明らかにする。

そこで、まず「社会」とは何かを明確に述べなければならない。この設問に答えることは簡単なようで、実際は難しい。

広辞苑によると

広辞苑 第六版 (机上版) (大型本)

  1. 相よって生活する一群の人民
  2. 同流の仲間
  3. 世の中、世間
  4. societyの福地源一郎の訳語(イ)あらゆる形態の人間の集団的生活をいう。家族・村落・ギルド・教会・群集・階級・国家・会社・政党などはその主要な形態で、自然に発生した集団と、人為的に特定の利害目的などに基づいてつくられるものがある。(ロ)さまざまな多くの集団の相互作用と総和からなる全体的社会」と説明している。

引用元 : 広辞苑 第六版 (机上版) (2008年1月11日)

辞典では以上のとおりだが、「社会」を論じるとしたら不十分である。橋爪大三郎氏(元東京工業大学教授)は「第1講社会学概論」で「社会」について次のように述べている。

「では「社会」とは何だろう。それがわかれば、社会学とは何かもわかるはずだ」と述べ、そして「社会とは、ずばり人間と人間の関係にほかならない」と言い切っている。

「社会」という概念・言葉が登場するのは歴史上、近代に入ってからである。「社会」という概念を明確に打ち出したのは17世紀〜18世紀のホッブズ(リヴァイアサン)、ロック(市民政府ニ論)、ルソー(社会契約論)であると言われている。そこで前記の各啓蒙思想家らが異口同音に述べていることを総括すると概ね次のとおり要約できる。

「自然状態にある人の集団は、万人が万人に対して狼(あるいは闘争)のような状態になる。だから国家を「人民を保護する機関」とみなし、国家に対して人民の抵抗権を認めさせた上で、国家(政府)に立法権を付託する体制が望ましいと唱えた。

それはまた国家と人民の集団を区別するという考え方を生み出すことにつながった。これが近代民主主義の原理的基礎であり、このようにして自覚されたのが市民社会である。

現代哲学事典

このように「社会」という概念が生成されたのは、まさに17〜18世紀で、その後「社会についての自覚」が人間の社会的活動を分析する経済学や政治学など社会科学を発展させ、多様な社会理論を生んでいった。マルクスは「社会」を「人間の物質的生産の過程」としてとらえている。そのほか社会有機体説、社会システム論等々多くの理論が出現した。いずれにしても社会に関する新しい理解は現代思想にとって根本課題となっている」。【以上:山崎正一・市川浩編「現代哲学事典」を参考に筆者が要約】

以上のとおり「社会」という概念が生成された歴史的過程について述べた。しかし「社会」は常に変化し、発展している。したがって先に説明があったように、社会に関する新しい理解は根本課題である。

そこで今日の社会を理解するために、私は「社会」を次のように定義した。

「社会とは、イズムが統合形成されたイデオロギーによる設計思想によってプログラミングされた国家組織(つまり社会システム)の中で関係づけられた人間の集合体」

この定義を分かり易くするために分析して説明する。

  1. 社会とは人間の集合体である。
  2. 人間の集合体は只単に烏合の衆ではなく、国家組織の中で関係づけられたものだ。
  3. 国家組織は一定の設計思想によってプログラミングされシステム化されている。
  4. その設計思想は、たとえば日本のように自由主義・資本主義・民主主義が統合され、形成されたものである。

次に「社会」について述べていこうと思う。まず、「イズム」とは何かを述べてみたい。イズムとは主義である。広辞苑の説明によると主義とは

広辞苑 第六版 (机上版) (大型本)

  1. 思想・学説などにおける明確な一つの立場。一定の主張。
  2. 特定の制度・体制、または態度」と説明している。例えば資本主義、社会主義等がある。

引用元 : 広辞苑 第六版 (机上版) (2008年1月11日)

とくに資本主義というイズムについては次のように考えている。人間は社会の中で生活を営み、活動する。そしてそれぞれが、それぞれの欲求を満たすため創意工夫を重ね、創造的な活動して前進していく。その前進の向かう先は富、または権力であり、その勝利者は自身の主張を合理化する。資本主義とは「富や権力を手中にした者がその合理性を主張し、後付で名付けたものであり、その後、その名称が用語化したものである」と私は考えている。

ここで資本主義を開花させる端緒になったフランス革命を歴史的に検証してみたい。

資本主義は最初にその主義があったのではない。王侯貴族が権力と領地と富を独占していた封建社会において、商人達が徐々に富(つまり商業資本)を蓄え、徐々に力をつけていった。そうして台頭してきたブルジョアジーたち(一部の貴族を巻き込んではいるが)は次第に封建的支配者に対して、隷属からの解放を希求する自由意識を持ち始めた。

ブルジョアジーたちを中心にして王侯貴族に対する反抗意識が高まり、人民のあいだに自由意識を広めていった。そして遂に革命によって王侯貴族を打倒し、貴族階級の独裁独占支配から解放を勝ちとり、独占されていた領地と富を開放させ、ブルジョワジー中心の政府をつくった。こうして共和制国家を樹立したのである。

トリコロール(青・白・赤)の旗はフランス革命運動の象徴で、自由・平等・博愛を意味し、後にフランス共和国の国旗になった。

自由主義と資本主義とは歴史上どのように関係しているのか考えてみると次のとおりである。ブルジョアジーが経済活動するには、自由の制限が大きな障害であった。だからこそ自由主義を旗印に闘争を繰り返したのである。つまり自由主義と資本主義は相関関係にある。しかも市民のボトムアップによる相乗作用によって実現したものであると言える。

なお社会主義についても述べておきたい。同じ「イズム」でありながら社会主義は資本主義のそれとは全く異なる。それはフランス革命とロシア革命の違いを考えれば分かる。

王侯貴族支配の封建社会を人民の革命によって打倒して新政府を樹立したことはフランス革命もロシア革命も同じである。しかし誰が指導し誰が主導的役割を果たしたかという点が丸で違う。

フランス革命はブルジョアジーが主導したが、ロシア革命は資本主義のアンチテーゼとしてマルクス・エンゲルスの理論を掲げてレーニンが革命を指導したのである。資本主義のようにボトムアップで革命が行われたのではなく、社会主義は最初にイズムありきで、しかもトップダウンで革命が実行されたのである。

よく「社会主義は一種の宗教みたいなものだ」と揶揄する所以は、「最初にイズムありきのトップダウンによるもの」だったからであろうと私は思う。

いずれにしても国民はその国家組織体制下で生きている。それは資本主義国家であろうと社会主義国家であろうと同じである。また、かつてのヒトラーのドイツ国家であろうと、現人神天皇を冠して東条英機が指導した日本軍国主義国家であろうと、その善悪・良否・是非はともかくも、国民はその旗印を支持して国家の意思に賛同し、国民はその国家組織体制の中で人と人が関係づけられた社会で生きている。

現代は資本主義社会である。かつてのソ連を中核とした社会主義体制は崩壊し、世界は資本主義経済体制一色になった。その資本主義は自由主義を前提とし、民主主義のルールにより運営されている。これらの主義(自由主義・資本主義・民主主義)が統合され形成されたイデオロギー、つまり資本主義経済思想によってプログラミングされた国家組織の中で関係づけられた社会で我々は生きている。

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