原野辰三の社会評論エッセイ
地球政府樹立を提言する
神の見えざる手が悪魔の手になった
マネーはマネーを求めて世界を徘徊している。
かつて、アダム・スミスが国富論で使った「神の見えざる手」という言葉は、『個人による自分自身の利益の追求が、結果として社会公共の利益を増進させる』という意味だった。
あれから300年、今日の社会をみていると「神の見えざる手」は「悪魔の手」に変わってしまった。
例えば、昨年のカジノ売り上げが、マカオでは69.5億ドル(約8400億円)に達し、米ラスベガスでの推計では65億ドル(7856億円)を超えた。併せると約 1兆6千256億円だ。
ギャンブルの問題は他所事ではない。むしろ日本が世界でもっとも金が使われている。
数字で見ると以下の通りだ。
パチンコ業界全体の平成13年度売り上げは約28兆円、1930万人がホールを訪れた。JRA(中央競馬会)の馬券の売り上げは平成12年度で3兆4000億円。パチンコ業界はJRAの7倍。
2000年度の流通小 売業の売り上げと比較すると、チェーンストア(スーパー)が16兆円、コンビニが6.6兆円、ホームセンターが3.7兆円、ドラックストアが2.6兆円。4つの業態をあわせてパチンコ業界にやっと並ぶ。
ギャンブルに巨額なマネーが動く自由競争社会が「公共の利益を増進させる」はずがないことは、この数字が物語っている。
『個人による自分自身の利益の追求が、結果として社会公共の利益を増進させる』というアダム・スミスのテーゼの地球版として佐和隆光京大教授は市場主義の終焉―日本経済をどうするのか (岩波新書)の中で
『国々が私利私欲を追求するに任せておけば、地球全体の福利が最大限達成される』という命題は成り立つのだろうか。
と述べ、成り立つはずがないと否定し、市場経済至上主義の新自由主義のグローバリゼーションを痛烈に批判している。
例えば、前述した原油相場を吊り上げて、世界中が困惑している投機マネーは「公共の利益を増進させる」どころか逆に一般消費者に大被害をもたらしているのである。
米国はGDPの10倍ものドルを発行し、流出した貿易赤字を還流させるている(仕組み時事コラムを参照)ほか、世界の資本を集中させ、世界各国に規制緩和を強要してグローバリズムで国境を取り払い、世界の企業や不動産や株式を買いあさっている。原油の高騰は正にそれを象徴している。
そして、各国も米国に引きずられるように企業と一体となって同様のことをやっている。
数字で説明すると、政府系ファンドでは石油産油国のオイルマネー(アラブ首長国連邦40兆円、サウジアラビヤ30兆円、ドバイ20兆円)や中国、ロシアなどで計312兆円、その他ヘッジファンドが160兆円,総計472兆円のマネーがマネーを求めて動いている。それに企業や個人投資家のマネーを合わせると莫大なマネーが蠢き合っている。
これらのマネーは、果たして「何に使われているのか」「社会公共の利益」「人類の幸福」に役立っているのだろうか。そこが問題である。
個人も企業も国家も私利私欲に任せておけば、神の見えざる手ではなく、悪魔の手になるのだ。
つまり、悪魔の手とは「社会公共の福利に反する」ことである。
その最大・最悪の例は、戦費・軍事である。
戦争が如何に悲惨かは、今更言うまでもない。大量の人を殺し、地上のあらゆる物を破壊し、自然を破壊・汚染し、それに莫大なマネーが使われる。
第二次世界大戦以降も、米国はベトナム戦争で57兆円、イラク戦争で120兆円も使ったのだ。
ベトナム戦争ではベトナム人(戦闘員・非戦闘員)が169万人が死に、米兵も5万8千人が死んだ。(人の死を数で表すこと自体が馬鹿げているが)
ここで、世界の軍事費を見てみたい。
世界の年間軍事費総額は84兆円(内、一位の米が全体の約4割を占め、つづいてロシアが7%、日本が第三位の6%、中国が5% 英国国際戦略研究所資料2001年度より)
毎年これほどの巨額な軍事費を各国の国民が負担しているのである。
「軍備は国防のためではない。関係者にとってはビジネスだ。」
これはカーネギー国際平和財団のジョセフ・シリンシオーネの言葉である。






